猫の病気は大阪市平野区の南大阪動物医療センターへ
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多飲多尿

多飲多尿について

多飲多尿とか多尿多渇と呼ばれる症状は決して珍しいものではない。しかし、たくさんの水を飲み多量の排尿をする動物に問題の無い動物はいないのである。もともと動物は必要最小限の水しか飲まないもので、特に猫はいつ水を飲んでいるのか気づかないくらい水には執着がない。


人や犬猫の体の約60%は水分です。この水分の調節にかかわる病気は多岐にわたり、内蔵の問題から代謝や内分泌の問題まで実に多様である。

 
糖尿病

犬猫の高齢化にともなって増加傾向にある糖尿病もそのひとつである。糖尿病ではインシュリンの不足やインシュリンに対する反応性の低下によって血糖値が上昇し、糖が尿にまで排泄されるようになる。

このとき、上昇した血糖によって血液の浸透圧(血液の水分の濃さ)が跳ね上がり、体は多量の水を飲んで薄め排泄しようとするのである。つまり、糖尿病の発病当初の症状で見逃してはいけないのが多尿多渇ということになる。

内分泌異常

副腎機能や甲状腺機能の異常、尿崩症と呼ばれる抗利尿ホルモン不足によっても多尿多渇は見られる。子宮蓄膿症では蓄膿の原因菌が作る毒素によって抗利尿ホルモンの受容体が占拠され、一時的な尿崩症を伴う。

慢性腎不全

あらゆる生物にとってエネルギーの体内への取り込みとエネルギー利用の際に発生する不要な有害物質の体外への排出は生命活動の根幹部分をなす。言い換えれば、体に必要なものつまり食物・栄養素・水分を摂取し、体に不要なものつまり老廃物や不消化物を尿や便として排泄することは、生きてゆくことそのものだと言える。

このうち、尿をつくり、体の外へ出す働きをしているのが、腎臓をはじめとする泌尿器系である。人間も動物たちも、歳をとるにつれ腎臓の機能が徐々に衰えてくるが、特に猫は他の動物と比較して、タンパク質の要求量が高く、水分摂取量が極めて少なく濃いオシッコをするという特徴をもった動物であることから、泌尿器への負担が大きく、泌尿器系の病気を起こしやすい動物といえるのである。


泌尿器系の様々な病気のうち、腎臓の機能を十分に果たせなくなった状態を腎不全と呼ぶ。腎臓はネフロンと呼ばれるユニットが数千個集まって構成された臓器で、一度壊れたネフロンは二度と元には戻らないのである。

しかし、ネフロンには十分な数的余裕があり、全ネフロンの75%を失っても、正常な腎機能を果たせると言われている。このネフロンが通常の速度よりも早く崩壊してゆく病気が「慢性腎不全」なのである。

したがって、「慢性腎不全」の猫も全ネフロンの75%が失われていく数年間は、まったくの無症状で、特殊な検査を除き血液検査上も何ら異常が現れることはない。しかし、それ以上のネフロンが失われると、腎臓の機能に不足が生じ、排泄しなければならない老廃物が体内に残り始める。


この状況に至ってはじめて血液検査で、「BUN」や「クレアチニン」と呼ばれる尿素を含む化合物の数値が上がり始めるのである。そして、私たちにもわかる症状が出てくる。最も分かりやすいのは、多飲他尿という症状である。

この症状は、血液内の上昇した尿素化合物に体が反応し、衰えた腎臓の機能を「水を余分に飲む」ことで補おうとする症状で、結果的に、数値の上昇を食い止めるに十分なことも多く、時には正常値に押し下げることに成功し、一見何の異常も無く生活しているように見えることもしばしばである。


犬のBUNの正常値はおおよそ25mg/dlまでとされているが、猫のBUNの正常値は36mg/dlまでなのである。これは、前述した「タンパク質の要求量が高く、水分摂取量が極めて少ない」という猫の特質からくるもので、猫は元来高いBUNに慣れており、多少のBUNの上昇くらいでは、食欲が衰えたり、元気が無くなったりという人や犬のような病的な症状を現しにくい。

したがって、「水をよく飲むくらいで、普段と変わったところも無いし、普通に生活しているから大丈夫ね」と安心してはいけないということになる。

さらに、ネフロンの崩壊が進むと、「多飲他尿」では補いきれないくらいに体の中に老廃物がたまり、すっかり元気も無くなり、食欲も落ち、「嘔吐」「体重減少」「貧血」「悪い毛艶」などの特徴的な症状が現れる。ここまでくると、もはや重症の状態ということなのである。


このように、いわゆる猫の「慢性腎不全」は、数年という年月をかけて徐々に腎臓の組織が破壊された(ネフロンが失われた)状態を言い、猫はその状態にうまく適応してよく耐えてくれている。「気づいたときにはすでに重症」ということを十分に理解する必要がある。